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最高裁平成6年6月13日第二小法廷判決・集民第172号673頁

2016-12-06

主    文

原判決を破棄する。
第一審判決主文第一項を次のとおり変更する。
被上告人は、上告人らに対し、別紙請求認容額一覧表の合計欄に記載の 各金員並びに同表の未払割増賃金欄に記載の各金員に対する昭和六三年一月二二日 から完済に至るまで年五分の割合による各金員及び同表の付加金欄に記載の各金員 に対する本判決確定の日の翌日から完済に至るまで年五分の割合による各金員をそ れぞれ支払え。
上告人らのその余の請求をいずれも棄却する。
訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

 

理    由

上告代理人戸田隆俊の上告理由について

一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
1 被上告人は、タクシー業を営む会社であり、上告人A1及びA2は昭和六〇年六月一日より前から、上告人A3は同年六月一七日から、上告人A4は同年八月二三日から、いずれも被上告人にタクシー乗務員として雇用され、昭和六二年二月二八日まで勤務してきた。ただし、上告人A2は昭和六一年九月一四日から同年一一月五日までの期間、上告人A3は同年九月八日から同年一一月二八日までの期間、上告人A4は同年一一月二七日から同年一二月二五日までの期間は、それぞれ稼働していない。
2 上告人らの勤務体制は、全員が隔日勤務であり、労働時間は、午前八時から翌日午前二時まで(そのうち二時間は休憩時間)である。上告人らに対する賃金は、毎月一日から末日までの間の稼働によるタクシー料金の月間水揚高に一定の歩合を乗じた金額を翌月の五日に支払うということになっており、各上告人の歩合の率は、第一審判決の別表に記載のとおりである。なお、上告人らが労働基準法(以下「法」という。)三七条(平成五年法律第七九号による改正前のもの。以下同じ。)の時間外及び深夜の労働を行った場合にも、これ以外の賃金は支給されておらず、右の歩合給のうちで、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできない。
3 上告人らの昭和六〇年六月一日から昭和六二年二月二八日までの間(以下、この期間を「本件請求期間」という。)における勤務実績は、これを昭和六一年一二月から昭和六二年二月までの三箇月間(ただし、上告人A4については昭和六二年二月の一箇月間。以下、この期間を「本件推計基礎期間」という。)における上告人らの勤務実績から推計することができるものというべきところ、この期間における上告人らの月間水揚高、総労働時間、時間外の労働時間、深夜労働時間等は、第一審判決の別紙2ないし5記載のとおりである。

二 上告人らは、右の事実関係に基づいて、上告人らに対しては本件請求期間における時間外及び深夜の割増賃金が支払われておらず、この間に上告人らに支払われるべき割増賃金の月額は、本件推計基礎期間の割増賃金額の平均月額を基に推計した金額を下回ることはないとして、本訴において、被上告人に対し、前記の午前二時以後の時間外労働及び午後一〇時から翌日午前五時までの深夜労働に対する割増賃金等の支払を求めている。これに対し、被上告人は、前記の歩合給には、時間外及び深夜の割増賃金に当たる分も含まれているから、上告人らの請求に係る割増賃金は既に支払済みであるとしている。
この上告人らの請求について、原審は、上告人らに対する本件請求期間の割増賃金が支払済みであるとすることはできないとしたものの、午前二時から午前八時までの時間については、上告人らが就労する法的根拠を欠き、上告人らがこの時間に就労しても何ら賃金請求権は発生しないとした上で、本件推計基礎期間における前記の勤務実績を基に同期間における割増賃金の平均月額を計算し、これによって本件請求期間における午後一〇時から翌日午前二時までの勤務に対する割増賃金額を推計して、上告人らの請求を一部認容したが、その余を棄却すべきものと判断した。

三 しかしながら、原審における当事者双方の主張からすれば、上告人らの午前二時以後の就労についても、それが上告人らと被上告人との間の労働契約に基づく労務の提供として行われたものであること自体は、当事者間で争いのない事実となっていることが明らかである。したがって、この時間帯における上告人らの就労を、法的根拠を欠くもの、すなわち右の労働契約に基づくものではないとした原審の認定判断は、弁論主義に反するものであり、この違法は、判決に影響を及ぼすことが明らかなものというべきである。
そうすると、弁論主義違背をいう論旨は理由があり、原判決は、その余の論旨について判断するまでもなく、破棄を免れない。

四 そこで、上告人らの本訴請求について判断するに、本件請求期間に上告人らに支給された前記の歩合給の額が、上告人らが時間外及び深夜の労働を行った場合においても増額されるものではなく、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできないものであったことからして、この歩合給の支給によって、上告人らに対して法三七条の規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたとすることは困難なものというべきであり、被上告人は、上告人らに対し、本件請求期間における上告人らの時間外及び深夜の労働について、法三七条及び労働基準法施行規則一九条一項六号の規定に従って計算した額の割増賃金を支払う義務があることになる。
そして、本件請求期間における上告人らの時間外及び深夜の労働時間等の勤務実績は、本件推計基礎期間のそれを下回るものでなかったと考えられるから、上告人らに支払われるべき本件請求期間の割増賃金の月額は、本件推計基礎期間におけるその平均月額に基づいて推計した金額を下回るものでなく、その合計額は、第一審判決の別紙2ないし5記載のとおりとなるものと考えられる。したがって、これと同額の割増賃金及びこれに対する弁済期の後の昭和六三年一月二二日から完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める上告人らの各請求は、いずれも理由がある。また、上告人らは、法一一四条(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)の規定に基づき、右の各割増賃金額と同額の付加金及びこれに対する本判決確定の日の翌日から完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求めているが、本件訴えをもって上告人らが右の請求をした昭和六二年一二月二五日には、本件請求期間における右の割増賃金に関する付加金のうち昭和六〇年一一月分以前のものについては、既に同条ただし書の二年の期間が経過していることになるから、この部分の請求は失当であり、その余の部分に限って右の請求を認容すべきである。
以上説示したところにより、上告人らの本訴請求をすべて認容した第一審判決は、右の限度でこれを変更すべきである。
よって、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八四条、三八六条、九六条、九二条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官    木   崎   良   平
裁判官    中   島   敏 次 郎
裁判官    大   西   勝   也
裁判官    根   岸   重   治
(別紙)
(請求認容額一覧表は末尾添付)

 

 

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