残業代請求|福岡の司法書士 にじいろ法務事務所

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東京地裁平成16年(ワ)第13320号平成19年3月26日判決

2016-09-06

主文
1 被告は,原告P1に対し,159万4257円及びうち144万0050円に対する平成16年6月30日から,うち15万4207円に対する同年9月25日から各完済まで年6分の割合による金員を支払え。
2 被告は,原告P2に対し,198万0363円及びうち159万2823円に対する平成16年6月30日から,うち38万7540円に対する同年9月25日から各完済まで年6分の割合による金員を支払え。
3 被告は,原告P3に対し,584万5858円及びうち197万8217円に対する平成16年9月25日から,うち386万7641円に対する平成18年7月5日から各完済まで年6分の割合による金員を支払え。
4 被告は,原告P4に対し,558万2146円及びうち278万8832円に対する平成17年3月29日から,うち279万3314円に対する平成18年7月5日から各完済まで年6分の割合による金員を支払え。
5 原告らのその余の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は,これを2分し,その1を被告の負担とし,その余を原告らの負担とする。
7 この判決は,1項ないし4項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由
第1 請求
1 主位的請求
(1) 被告は,原告P1に対し,253万3696円及びうち226万7935円に対する平成16年6月30日から,うち26万5761円に対する同年9月25日から各完済まで年6分の割合による金員を支払え。
(2) 被告は,原告P2に対し,428万3727円及びうち335万2842円に対する平成16年6月30日から,うち93万0885円に対する同年9月25日から各完済まで年6分の割合による金員を支払え。
(3) 被告は,原告P3に対し,1302万6097円及びうち388万1606円に対する平成16年9月25日から,うち914万4491円に対する平成18年7月5日から各完済まで年6分の割合による金員を支払え。
(4) 被告は,原告P4に対し,1141万2425円及びうち560万1259円に対する平成17年3月29日から,うち581万1166円に対する平成18年7月5日から各完済まで年6分の割合による金員を支払え。

2 予備的請求
(1) 被告は,原告P1に対し,90万4734円及びこれに対する平成16年6月30日から完済まで年6分の割合による金員を支払え。
(2) 被告は,原告P2に対し,165万5821円及びうち143万4473円に対する平成16年6月30日から,うち22万1348円に対する同年9月25日から各完済まで年6分の割合による金員を支払え。
(3) 被告は,原告P3に対し,552万2863円及びうち140万9435円に対する平成16年9月25日から,うち411万3428円に対する平成18年7月5日から各完済まで年6分の割合による金員を支払え。
(4) 被告は,原告P4に対し,409万5468円及びうち220万4497円に対する平成17年3月29日から,うち189万0971円に対する平成18年7月5日から各完済まで年6分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
本件は,客室乗務員として被告に雇用され,被告の深夜業免除制度に基づいて深夜業免除の申請をした原告らが,被告によって無給日とされた日について,被告に対し,主位的に,債務の本旨に従った労務の提供をしたにもかかわらず当該日の就労を拒否された(主位的請求原因),当該日に就労義務はなく,被告から勤務指示を受けたその余の日についてはいずれも勤務に従事した(予備的請求原因)と主張して,当該日にかかる賃金の支払を求め,予備的に,当該日にかかる休業手当の支払を求めた事案である。

1 前提事実(証拠を掲記した事実以外は,当事者間に争いがないか,弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。)
(1) 当事者
被告は,国際線及び国内幹線における定期航空運送事業等を目的とする会社である。
原告P1は昭和55年に,原告P2は昭和53年に,原告P3は昭和58年に,原告P4は昭和56年に,いずれも客室乗務員として被告に雇用され,原告らが賃金又は休業手当の支払を請求している期間(以下「本件請求期間」という。)は,国際線への乗務を主とする成田基地に配置されていた。
原告P4を除く原告らは,現在も被告に勤務しており,原告P4は,平成18年1月31日付けで被告を退職した。
なお,原告らは,いずれも日本航空客室乗務員組合(以下「客乗組合」という。)の組合員である。
(2) 被告における深夜業免除制度
ア深夜業免除を申請した客室乗務員については,午後10時から午前5時(以下「深夜時間帯」という。)の勤務が免除される。
イ客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合には無給となる。
すなわち,被告の賃金規定14条3号(就業規則15条11号・就業規則解釈運用基準15条10項H号)は,「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」についての賃金の支払はその都度決定する旨規定しているところ,被告は,平成16年7月15日,「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」については賃金を支払わない旨決定した。
ウ業務手当一般保障が,不就業日が発生した日数分について案分して停止される。
すなわち,客室乗務員が所定の乗務員編成の一員として乗務に従事した場合あるいは被告又は他社の航空機に便乗した場合には乗務手当が支払われるが,この額が1か月あたり65時間に相当する乗務手当額を下回る場合にはその差額が乗務手当一般保障として支払われていたところ,被告は,同日,客室乗務員諸手当規程16条1項8号を新設し,「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」については業務手当一般保障が停止される旨規定した。
エなお,被告に勤務する全客室乗務員の約85パーセントにより組織されているジャル労働組合(以下「JALFIO」という。)は,上記各規定及びこれに従った取扱いに合意している。
また,上記合意に際し,被告は,JALFIOに対し,「深夜業免除の希望者数はコントロールできる性質のものではなく,かつ,事業計画に基づき作成する「深夜業免除パターン」の数も変動するものであることから,勤務日数の保障はしかねるものの,更なる工夫の継続により与件に大幅な変更が生じない限り,当面の間,1暦月において5日間の勤務日を確保する」旨約した(乙2の1,2)。
(3) 原告らの勤務実績等
原告らは,本件請求期間において,深夜業免除を申請し,被告における深夜業免除制度の適用を受けた。
原告ら客室乗務員の具体的な労務内容は,被告によって毎前月23日に指定される勤務割(オリジナルスケジュール)によって特定されるところ,原告らは,被告が指定した勤務割に従って,それぞれ別紙(5)のとおり勤務したが,多くても月に2回程度の乗務しかアサインされなかった。なお,原告らがアサインされた乗務日数は,別紙(7)の認容額一覧表の「乗務」欄記載のとおりである。
これに対し,JALFIO所属の客室乗務員に対しては,1か月に5日から13日(概ね10日前後)の乗務がアサインされているが,その詳細は,別紙(7)の認容額一覧表の「JALFIO」欄記載のとおりである(乙53,証人P5の証言,弁論の全趣旨)。
なお,被告が,「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」に該当するとして,無給日(以下「MSH」という。)と指定した日は,別紙(5)の中で無給日と記載された日(以下「本件MSH」という。)であり,その日数は,別紙(7)の認容額一覧表の「MSH」欄記載のとおりである。
(4) 深夜業免除者数の推移
深夜業免除制度により深夜業の免除を受けた客室乗務員の数(以下「深夜業免除者」という。)は,別紙(6)のとおりである(乙37)。

2 当事者の主張と争点
基準内賃金差額分,乗務手当・乗務手当保障額差額分,乗務付加手当差額分及び先任付加手当差額分に関する原告らの請求額(ただし,予備的請求原因に基づく請求においては,乗務付加手当差額分及び先任付加手当差額分を除く。)は,それぞれ別紙(1)のとおりであり,臨時手当差額分に関する原告らの請求額は,別紙(2)のとおりである。
また,休業手当に関する原告らの請求額(予備的請求)は,別紙(3)のとおりである。
そして,当事者の主張の骨子は,別紙(4)のとおりであるが,原告らの主位的請求のうちの主位的請求原因にかかる争点は,次のとおりである。
(1) 原告らが債務の本旨に従った労務を提供したが,被告がその受領を拒否したといえるか。
(原告らの主張)
原告らは,深夜時間帯以外の時間帯における客室乗務員としての労務に従事する意思と能力を有しており,被告に対してこのような労務の提供をした。
原告らがしたこのような労務の提供は,債務の本旨に従ったものであるにもかかわらず,被告はその受領を拒絶した。
(被告の主張)
原告らが主張するような労務提供の意思を有していることを原告らが被告に対して伝えたことはない。
また,被告における客室乗務員の労務は,深夜時間帯を含む勤務(以下「深夜勤務」という)を中核とするものであ。るから,原告らに深夜勤務をする意思がない以上,原告らが債務の本旨に従った労務の提供をしたとはいえない。
(2) 本件MSHは,前提事実(2)の「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」にあたるか。
(被告の主張)
被告は,通常の客室乗務員として指定されるべき勤務割のうち,深夜勤務を含む日については,当該勤務を指定せず,本件MSHと指定した。
したがって,本件MSHは,「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」に当たる。
また,仮に,原告らが主張するとおり,「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」が,被告が深夜時間帯以外の時間帯における勤務(以下「昼間勤務」という。)を容易に指定できる場合を含まないとしても,本件MSHについては,被告が原告らに昼間勤務を指定することは不可能又は少なくとも著しく困難であった。
(原告らの主張)
「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」とは,可能な限り深夜業以外の勤務に就かせる措置(例えば,①既存の乗務パターンを分割して,後述する深夜業免除パターンを新たに創設し,同パターンの数自体を増やす,②深夜業免除者にスタンバイ勤務を割当てる,③深夜業免除者を羽田客室乗員部(HJZ)又は羽田フライト旅客部(KPN)へ配置転換する,④深夜業免除者に地上勤務を担当させる,⑤深夜業免除者をJALジャパンへ出向させることが考えられる。)を採った上でなお勤務を指定できず不就業となる場合を指すと解すべきである。
被告は,深夜時間帯以外の時間帯における勤務に就かせることができるかどうかを検討することなく,機械的に月1回程度の乗務を指定したにすぎないのであって,本件MSHは,「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」にあたらない。
(3) 原告らが被告に対して深夜業免除の申請をしたことによって,「事業計画に基づき作成された乗務パターンのうち,深夜勤務にかからない日帰りの乗務パターン」以外の日(所定の休日等を除く)に賃金が支払われないことに同意したといえるか。
(被告の主張)
原告らは,被告における深夜業免除制度が,「事業計画に基づき作成された乗務パターンのうち,深夜勤務にかからない日帰りの乗務パターン」以外の日(所定の休日等を除く)に賃金が支払われない制度である旨の説明を受けた上で,被告に対し,本件請求期間にかかる深夜業免除の申請をすることにより,これに同意した。
(原告らの主張)
否認する。
(4) 被告が主張する「帰責事由の評価障害事実」によって,被告の帰責事由が否定されるか。
(被告の主張)
①本件MSHは,原告が深夜業免除という権利を行使しなければ生じなかった不就業である,②本件MSHは,被告が育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下「育介法」という。)の深夜業免除義務を履行しなければ発生しなかった不就業である,③本件MSHは,被告が労働組合の要請や東京労働局の指導に従って全深夜業免除申請者の深夜業を免除しなければ発生しなかった不就業である,④全深夜業免除申請者の深夜業を免除した場合,全深夜業免除者に対して昼間勤務を付与することによって不就業の発生を防ぐことは不可能又は少なくとも著しく困難であって,到底容易ではない,⑤深夜業免除申請が受入れられて深夜業が免除されれば不就業が発生すること及び当該不就業日が無給となることについて被告客室乗務員の約85パーセントを組織する労働組合との間で労働協約が締結されており,深夜業免除申請者に発生した不就業は被告の責に基づかない不就業であることを被告客室乗務員の大多数が認めている,⑥原告らの雇用契約においては,客室乗務員として深夜時間帯を含む乗務パターンに乗務することが主要な勤務内容であった,⑦原告らないし原告ら所属の労働組合が被告に対して提示したのは,全深夜業免除申請者における月間10日間の休日以外の日に対し,全て昼間勤務を指定するという非現実的な条件であったところ,被告の帰責事由は,それらのうちいずれか一つが認められれば否定されるというべきである。
(原告らの主張)
争う。
(5) 客室乗務員諸手当規程16条1項8号が就業規則の不利益変更に該当し,効力を有しないか。
(原告らの主張)
被告は,客室乗務員諸手当規程16条1項8号を新設し,従来深夜業免除者にも適用されていた業務手当一般保障を停止したが,これは就業規則の不利益変更に該当する。
しかも,このように変更することに合理性はない。
(被告の主張)
これまで,深夜業免除による不就業に対して賃金が支払われることを根拠付けた規定はないし,そのような運用実態も存しなかったのであるから,客室乗務員諸手当規程16条1項8号を新設したことは就業規則の不利益変更にはあたらない。
しかも,被告に勤務する全客室乗務員の約85パーセントにより組織されているJALFIOは,同規定及びその取扱いに合意しているし,同規定に特段の不合理な点はない。

第3 当裁判所の判断
1 争点(1)について
(1) 原告らが,被告に対して深夜業の免除を申請する以前から,客室乗務員として被告に勤務していたことは前提事実(1)のとおりであり,客室乗務員の具体的な労務内容が,被告が指定する勤務割によって特定されることは前提事実(3)のとおりであるから,原告らが,深夜業の免除を申請する以前から,被告が指定した勤務割に従って客室乗務員としての勤務を継続してきたことは明らかである。
そして,原告らは,被告に対して深夜業の免除を申請することによって,深夜時間帯における就労の免除を求めたにすぎないと解されるから,原告らが,それ以外の時間帯において,客室乗務員としての労務を提供する意思及び能力を有しており,その履行を提供していたことは,客観的に見て明らかである。
この点に関し,被告は,客室乗務員の労務が深夜勤務を中核とするものであるとして,原告らに深夜勤務をする意思がない以上,原告らが債務の本旨に従った労務の提供をしたとはいえないと主張する。
しかしながら,被告の深夜業免除制度は,育介法に基づく制度であるところ,同法19条1項は,「午後10時から午前5時までの間において労働させてはならない」と規定しており,この規定は,深夜時間帯が所定労働時間内であるか否かにかかわらず,深夜時間帯における労働者の労務提供義務が消滅することを明らかにしたと解するのが相当である。
そうすると,深夜業免除者である原告らには,深夜時間帯における労務提供義務はないのであるから,客室乗務員の労務が深夜勤務を中核とするものであったとしても,原告らのした労務の提供が債務の本旨に従った労務の提供として欠けるところはなかったというべきである。
(2) そして,被告が,本件MSHをMSHと指定し,原告らに対して乗務をアサインするなどしなかったことは前提事実(3)のとおりであるから,被告は,本件MSHにおいて,原告らが提供した債務の本旨に従った労務の受領を拒絶したと認めることができる。

2 争点(2)について
(1) まず,前提事実(3),証人P5の証言,弁論の全趣旨によれば,確かに,被告は,原告ら客乗組合に所属する深夜業免除者に対しては,1か月に少なくとも1日の乗務をアサインすることを方針とし,勤務割の作成に際しても,1か月に1日か2日程度の乗務をアサインした後は,所定の休日等を除く空白日に別の乗務をアサインできるかどうかについて特に検討することもなく,MSHと指定しているにすぎないことが認められる。
しかしながら,乙41,43,47,証人P6及び同P5の各証言,弁論の全趣旨によれば,深夜業免除者に割当てることができる乗務は,基地への出頭が午前5時以降の便で,午後8時半までに帰着する国内線又は午後7時半までに帰着する国際線の便にかかる乗務(以下「深夜業免除パターン」という。)であるが,そもそもこのような深夜業免除パターンは,被告において半年ごとに作成される既存のベーシックパターンを前提とすれば,全乗務パターンの約2ないし3パーセントしかないこと,しかも,各乗務便には1名の先任客室乗務員を乗務させなければならない上,他の航空会社との厳しいサービス競争の中でのサービス品質の維持,向上等という観点から,国内線の乗務についてはこれを専門とする羽田客室乗員部(HJZ)に所属する客室乗務員を一定数乗務させる必要があるほか,新人教育のために新人及び指導担当の客室乗務員にも深夜業免除パターンを割当てる必要があることや,深夜業免除者ではない客室乗務員(以下「一般客室乗務員」という。)との公平を図る必要もあることから,全深夜業免除パターンを深夜業免除者に割当てることはできないこと,このため,深夜業免除者に割当てることが可能な深夜業免除パターンは全乗務パターンの約2パーセントにすぎず,深夜業免除者の全勤務予定日に深夜業免除パターンを確保しようとすると,約75名の分しか確保し得ないことが認められる。
そうすると,被告は,原告ら客乗組合所属の深夜業免除者に対しては,所定の休日等を除き,1か月に1日か2日程度の乗務を割当てる以外の日については機械的にMSHと指定していることが認められるが,前提事実(4)のとおり,本件請求期間における深夜業免除者は75名を大きく上回っていたのであるから,上記のような前提を維持する限り,全深夜業免除者の全勤務予定日に乗務を割当てることは物理的に不可能であったといわざるを得ない。
しかも,乙35の1ないし4,乙44,証人P5の証言によれば,本件請求期間当時において,原告らと同じグループに所属する一般客室乗務員の昼間勤務は,深夜業免除パターンへの乗務を含めて,平均して1か月あたり約0.7日しかなく,深夜業免除パターンへの乗務も,平均して,2か月に1日以下程度しかなかったことが認められるのであって,このような事情をも併せて考慮すれば,深夜業免除者に多くの深夜業免除パターンを指定することが困難な状況にあったことが認められる。
(2) この点に関し,原告らは,深夜業免除者に対してより多くの深夜業免除パターンを割当てるための方策を種々指摘し,その上で,「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」とは,可能な限り深夜業以外の勤務に就かせる措置を採った上でなお勤務を指定できず不就業となる場合を指すと解すべきであると主張しているので,これらについて検討する。
アまず,既存の乗務パターンを分割して,新たな深夜業免除パターンを創設し,同パターンの数自体を増やすという方策であるが,証人P6の証言によれば,確かに,既存の乗務パターンを分割して,深夜業免除パターンの数自体を増やすことは物理的に可能であることが認められるものの,他方で,このために膨大な追加コストが必要となることが認められる。
この点について,乙39の1,2,乙41,証人P6及び同P5の各証言によれば,平成17年10月の国内線の乗務パターンをもとに,その当時の深夜業免除者約170名に対して,1か月16日の勤務日に国内線の深夜業免除パターンを割当てる(1日あたりの深夜業免除者の出面数を70名増加させる)ことを前提としてシミュレーションしたところ,少なくとも,①深夜業免除者の出面数が増加することによる賃金コストとして年間7.5億円,②一般客室乗務員の1日の出面数が増加し,新規の客室乗務員を雇用するための賃金コストとして年間4.5億円,③深夜業免除者及び一般客室乗務員の1日の出面数が増加することによる出退社の交通費等のコストとして1.5億円の追加コストが必要となると試算されたことが認められる。
もっとも,証人P6,同P5の各証言によれば,この試算は,乗務パターンの途中で客室乗務員を交替させないという前提でされており,このため新規の客室乗務員を雇用するための賃金コストが必要となるとされていることが認められるところ,証人P7の証言を参酌すれば,少なくとも1日の乗務の途中で客室乗務員の交替をさせないことが被告の業務運営にとってどの程度の価値を有するのかについては判然としない部分も存するが,仮にこれにかかるコストを省いたとしても,膨大な追加コストを必要とすることは明らかである。
イ次に,深夜業免除者にスタンバイ勤務を割当てるという方策であるが,証人P6及び同P5の各証言によれば,スタンバイ勤務とは,乗務を予定した客室乗務員が病気等で欠勤したり,機材が変更され,必要とされる客室乗務員の数が増えたりした場合に対処するために待機する勤務をいうが,乗務パターンの約98パーセントが深夜時間帯を含む乗務パターンであるため,深夜業免除者に対してスタンバイ勤務を割当てる意味はあまりないことが認められる。
この点に関して,平成15年8月以前の時点において,深夜業免除者に対してもスタンバイ勤務が割当てられていたことは当事者間に争いがないところ,甲55の3では,平成14年4月から平成15年3月までの間において,スタンバイ勤務21日のうち14日において深夜業免除パターンでの起用があったとするデータが存在し,甲56,原告P2の供述によれば,原告P2については,スタンバイ勤務からの起用率が5割強であったことが認められる。
しかしながら,証人P7の証言によると,これらのデータは,深夜業免除者が60名程度であったころのものであることが認められるところ,前提事実(4)のとおり,本件請求期間における深夜業免除者は60名を大きく上回っていたのであるから,これらのデータが前記認定を左右するものではない。
また,甲53,59,81,乙53によれば,勤務割がされてから当日までの間に欠員補充される乗務パターンが概ね60程度あることが窺われるが,これは深夜業免除パターンに限った数字ではないから,このような事情があるからといって上記認定を左右するものでもない。
さらに,甲53,59,甲81には,乗務パターンを日帰りパターン等に分割してスタンバイ勤務から起用することが日常的に行われていたとか,3月,8月及び年末年始の繁忙期には,特別に日帰りパターンを作っていた旨の供述部分も存するが,このような供述内容を裏付ける客観的な証拠はないし,乙47,53,54にはこれを否定する供述部分も存することからすれば,前記認定を左右するとは解されない。
ウ次に,深夜業免除者を羽田客室乗員部(HJZ)又は羽田フライト旅客部(KPN)へ配置転換するという方策であるが,証人P6の証言によれば,確かに,羽田客室乗員部所属の客室乗務員については,乗務の1割から2割程度が深夜業免除パターンであることが認められる。
しかしながら,乙41,証人P6の証言によれば,被告は,他の航空会社との厳しいサービス競争の中で,国内線のサービス向上を積年の課題としており,国内線の乗務を専門とする羽田客室乗員部には国内線サービスを向上するために選ばれた客室乗務員を配置する必要があること,また,羽田フライト旅客部は,契約社員として入社した社員に対する指導・育成のための組織であるから,一連の乗務パターン全体において契約社員に同行して,これを指導育成するインストラクターとしての役割を果たせる客室乗務員を配置する必要があること,このため,これらの部署に深夜業免除者を配置するのは業務運営上必ずしも適切ではないことが認められる。
エ次に,深夜業免除者に地上勤務を担当させるという方策であるが,証人P6の証言によれば,確かに,本来地上職が行う勤務に客室乗務員をあてている例があることが認められる。
しかしながら,乙41,証人P6及び同P5の各証言によれば,客室乗務員の賃金体系と地上職のそれとは異なっており,本来地上職が行う勤務への客室乗務員の配置転換は,客室乗務員としての地位,給与体系を維持しながら,地上職が行う勤務に配置する高度の必要性がある場合に限って行われていること,また,客室乗務員の本来勤務としての地上勤務には訓練,教育等に伴う地上勤務があるが,これは年に4日程度しかないこと,したがって,深夜業免除者に地上勤務を担当させるのは業務運営上必ずしも適切ではないことが認められる。
オ最後に,深夜業免除者をJALジャパンへ出向させるという方策であるが,証人P6の証言によれば,確かに,JALジャパンにおいては,深夜業免除パターンが多く存在することが認められる。
しかしながら,証人P6の証言によれば,JALジャパンへの出向は,同社におけるマンニング不足を補うことを第一義的な目的として行われており,深夜業免除者を出向させたのではその目的に添わないことが認められる。
カこうしてみると,深夜業免除者に対してより多くの深夜業免除パターンを割当てるために原告らが指摘した各種方策は,仮にこれらを被告に求めるとすれば,過大な負担を被告に課す結果となるといわざるを得ない。
しかしながら,深夜業免除制度を定めた育介法は,就労を免除された深夜時間帯の勤務についてすら有給であることを保障してはいないのであって,ましてや上記のような過大な負担を課す結果となることを使用者に義務付けていると解することは到底できないから,原告らが指摘する各種方策を実施することが被告に義務付けられていると認めることはできないし,「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」の解釈についても,原告らが主張するように限定して解釈すべき根拠もないといわざるを得ない。
(3) しかしながら,甲27ないし29,40,乙47,証人P5の各証言によれば,客室乗務員の実際のパターン編成及び勤務割は,もともとベーシックパターンに固定されているわけではなく,必要に応じて随時柔軟に運用されており,様々なイレギュラー等によって勤務割が変更されることも少なからず存在するのであって,ベーシックパターンにない深夜業免除パターンが深夜業免除者に対してアサインされることもあることが認められる。
しかも,JALFIO所属の客室乗務員に対して,1か月に5日から13日(概ね10日前後)の乗務がアサインされていることは,前提事実(3)のとおりであるところ,証人P7の証言によれば,被告における深夜業免除者の9割以上がJALFIOに所属していると認められる上,上記(1)のとおり,約75名については深夜業免除者の全勤務予定日に深夜業免除パターンを確保することができるところ,本件請求期間における深夜業免除者数が前提事実(4)のとおりであることをも踏まえれば,原告ら客乗組合に所属する深夜業免除者に対しても,JALFIO所属の客室乗務員に対するのと同程度のアサインをすることは,十分に可能であったと認めるのが相当である。この点について,証人P5が,原告ら客乗組合に所属する深夜業免除者に対しては,1か月に少なくとも1日の乗務を割当てるという方針で勤務割をしているが,JALFIOに所属する深夜業免除者に対してアサインするのと同日数の乗務を原告ら客乗組合に所属する深夜業免除者に対してアサインすることも可能である旨証言しているのも,上記のような事情を斟酌し,経営上の合理性の観点からの判断をも踏まえた上での証言と解されるのであり,上記のような認定を裏付けるものである。
なお,被告は,JALFIOに所属する深夜業免除者に対する措置は,労使の合意によって特別の義務を負ったことによるものであると主張するようであるが,被告は,JALFIOと合意した日数を大幅に上回る日数の乗務をJALFIOに所属する深夜業免除者にアサインしているのであって,上記のような事情,特に深夜業免除パターン数と深夜業免除者数との関係をも踏まえれば,労使の合意があるが故に被告が経営上の合理性を度外視してJALFIOに所属する深夜業免除者に対する乗務のアサインをしていると解することはできない。
以上のような諸事情を総合考慮すれば,JALFIOに所属する深夜業免除者に対して乗務がアサインされた日数を超える部分については「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」にあたると認めざるを得ないとしても,当該日数に至るまでの日数については「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」にはあたらないと認めるのが相当である。
そうすると,本件MSHのうち,「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」にはあたらないと判断される日数は,別紙(7)の認容額一覧表の「JALFIOとの差」欄記載のとおり(なお,前提事実(3)によれば,原告P3は,平成16年5月,平成17年1月,同年4月,同年8月及び同年10月に,いずれも産前休職を取得していることが認められるから,このような事情を斟酌すれば,当該月においてMSHと指定された日数のうち,別紙(7)の認容額一覧表の「JALFIOとの差」欄に記載した日数についてのみ「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」にはあたらないと認めるのが相当である。)となる。
(4) なお,原告らは,賃金規定14条3号(就業規則15条11号・就業規則解釈運用基準15条10項H号)に基づく上記のような取扱いが従来にはなかった不利益な取扱いであるとも主張するようであるが,そのような事実を認めるに足る証拠はない。
(5) そうすると,「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」にはあたらないと判断される日数については,被告の受領拒絶による原告らの債務の履行不能は被告の責に帰すべき事由に基づくものであるというべきである。

3 争点(3)について
被告は,原告らが深夜業免除の申請をしたことによって,「事業計画に基づき作成された乗務パターンのうち,深夜勤務にかからない日帰りの乗務パターン」以外の日(所定の休日等を除く)に賃金が支払われないことに同意したと主張するが,少なくとも,原告らが,「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」にはあたらないにもかかわらず,被告がMSHと指定した日についてまで賃金が支払われないことに同意したと認めるに足る証拠は何ら存しない。
そうすると,前記2,(5)の判断を左右するものではない。

4 争点(4)について
被告は,争点(4)の(被告の主張)のとおり主張するが,被告が主張するような事情が認められたとしても,「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」にはあたらないにもかかわらず,被告がMSHと指定した日についてまで,被告の受領拒絶を正当化し得るものとは解されない。
そうすると,前記2,(5)の判断を左右するものではない。

5 争点(5)について
確かに,前提事実(2)のとおり,客室乗務員に対しては乗務手当一般保障の支給があったところ,客室乗務員諸手当規程16条1項8号が新設されて,原告らがその支給を受けられなくなったというのであるから,いわゆる就業規則の不利益変更にあたると解する余地はある。
しかしながら,乙41,証人P6の証言によれば,被告は,深夜業免除申請者を多く受け入れることを前提とした被告の深夜業免除制度を維持するために,既に多額のコストを負担していることが認められる。
これに対して,原告らは,自らの意思で深夜業免除の申請をしている上,争点(2)において検討したような事情からすれば,自ら選択した職務の特殊性の故に,昼間勤務自体が限られているという状況の中で,結果的に不就業を余儀なくされるに至ったにすぎないといわざるを得ないのであって,乙57,弁論の全趣旨によれば,原告らが被る不利益も,1か月あたり,65時間分の乗務手当相当額から実際に乗務した時間分の乗務手当相当額を控除した金額,すなわち,原告らが実際には乗務していない時間にかかる乗務手当相当額にすぎないことが認められる。
しかも,乙41によれば,乗務手当一般保障は,客室乗務員に対して1か月65時間の乗務を指定することが期待できることを前提として,実際にアサインされた乗務時間の不公平を是正するための制度であるから,そのような前提を欠く深夜業免除者にこの制度を適用することはそもそも合理的なものではない。
のみならず,被告に勤務する全客室乗務員の約85パーセントにより組織されているJALFIOが,上記規定及びこれに従った取扱いに合意していることは,前提事実(2)のとおりであるし,乙32,41,証人P7の証言によれば,被告は,多数回にわたって,客乗組合との間で団体交渉等を行っており,被告のこの間の対応が不誠実なものであったと認めるに足る証拠もない。
そして,前記のとおり,育介法が,就労を免除された深夜時間帯の勤務についてすら有給であることを保障してはいないことをも併せて考慮すれば,客室乗務員諸手当規程16条1項8号は合理的なものであると認めるのが相当である。
したがって,争点(2)において「, 客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」にあたると判断された日数については,業務手当一般保障が停止されることとなる。

6 主位的請求における認容額について
そこで,以上の認定,判断を前提として,主位的請求における認容額について検討する。
(1) 基準内賃金差額分について
まず,被告における休日が1か月に10日であったことは当事者間に争いがなく,原告P1の平成15年10月から平成16年3月までの間の基準内賃金は40万1804円(甲21,甲67の2),原告P2の基準内賃金は,平成15年10月から平成16年3月までが45万7966円,同年4月が46万2428円(甲22),原告P3のそれは,平成15年9月から平成16年3月までが40万2280円(甲60の4ないし10),平成16年4月が40万7381円(甲60の11),同年5月が4万0739円(甲60の12),同年8月から平成17年1月までが40万7381円(甲60の13ないし18),同年4月が24万9532円(甲60の20,弁論の全趣旨),同年5月から同年8月までが41万5884円(甲60の20ないし23),同年10月が39万5090円(甲60の24),同年11月から平成18年3月が41万5884円(甲60の25ないし29),同年4月が40万3577円(甲60の30),原告P4のそれは,平成16年4月から平成17年3月までは44万1714円(甲65の5ないし16),同年4月から同年11月までは44万7543円(甲65の17ないし24)であったことが認められる。
そして,乙57,弁論の全趣旨によれば,被告は,基準内賃金について,本件MSHの日数分の日割相当額を翌月の賃金から控除したことが認められるから,争点(2)において「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」にはあたらないと判断された日数分(別紙(7)の認容額一覧表の「JALFIOとの差」欄記載の日数分)の日割相当額(同「未払基準内賃金」欄記載の金額)の支払義務を負うこととなる。
(2) 乗務手当・乗務手当保障額差額分について
乙57,弁論の全趣旨によれば,原告P1の乗務手当単価は2490円,原告P2のそれは2570円,原告P3のそれは,平成15年9月から平成16年5月までの間は2320円,同年8月から平成18年4月までの間は2370円,原告P4のそれは2520円であったこと,したがって,原告P1の乗務手当一般保障は16万1850円,原告P2のそれは16万7050円,原告P3のそれは,平成15年9月から平成16年5月までの間は15万0800円,同年8月から平成18年4月までの間は15万4050円,原告P4のそれは16万3800円であったこと,また,深夜業免除者に乗務が割当てられるとすれば,少なくとも,1日あたり4時間の乗務時間が加算されたと認めることができる。
そして,乙57,弁論の全趣旨によれば,被告は,争点(2)において「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」にはあたらないと判断された日数分(別紙(7)の認容額一覧表の「JALFIOとの差」欄記載の日数分)についても乗務手当や乗務手当一般保障を支払っていないことが認められるから,被告は,当該日数分の乗務手当一般保障の金額を上回ることが明らかな,1日あたり4時間として計算された当該日数分の乗務手当額(同「未払乗務手当」欄記載の金額。ただし,請求額を上限とする。)について支払義務を負うこととなる。
(3) 乗務付加手当差額分について
乙57,弁論の全趣旨によれば,原告らの乗務付加手当の時間あたり単価はいずれも100円であったことが認められ,上記(2)のとおり,深夜業免除者に乗務が割当てられるとすれば,少なくとも,1日あたり4時間の乗務時間が加算されたと認めることができる。
そして,乙57,弁論の全趣旨によれば,被告は,「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」にはあたらないと判断された日数分(別紙(7)の認容額一覧表の「JALFIOとの差」欄記載の日数分)につき1日4時間あたりの乗務付加手当(同「未払乗務付加手当」欄記載の金額)を支払ってはいないから,これについて支払義務を負うこととなる。
(4) 先任付加手当差額分について
乙57,弁論の全趣旨によれば,原告らの先任付加手当の時間あたり単価はいずれも200円であったことが認められ,上記(2)のとおり,深夜業免除者に乗務が割当てられるとすれば,少なくとも,1日あたり4時間の乗務時間が加算されたと認めることができる。
そして,乙57,弁論の全趣旨によれば,被告は,「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」にはあたらないと判断された日数分(別紙(7)の認容額一覧表の「JALFIOとの差」欄記載の日数分)につき1日4時間あたりの先任付加手当(同「未払先任付加手当」欄記載の金額)を支払ってはいないから,これについて支払義務を負うこととなる。
(5) 臨時手当差額分について
ア乙50の1ないし4,弁論の全趣旨によれば,被告と客乗組合は,平成16年7月から平成17年12月までに支給される臨時手当について,①臨時手当の金額を「(基礎額×係数-定額)×勤務反映期間中在籍日数/勤務反映期間日数×(1-1/2×勤務反映期間中欠勤日数/勤務反映期間中所定勤務日数)+定額」という算式に従って算定すること,②平成16年7月支給の臨時手当の勤務反映期間は平成15年10月1日から平成16年3月31日,同年12月支給の臨時手当のそれは同年4月1日から同年9月30日,平成17年7月支給の臨時手当のそれは平成16年10月1日から平成17年3月31日,同年12月支給の臨時手当のそれは同年4月1日から同年9月30日とすること,③勤務反映期間中に産前休職を取得した場合には,上記計算式のうち,「勤務反映期間中在籍日数/勤務反映期間日数」とあるのを「1-勤務反映期間中休職日数/勤務反映期間日数」と読替えること,④深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合については,勤務反映期間中の欠勤日数とすることを合意したこと,また,原告P3の,平成16年12月支給の臨時手当の勤務反映期間中の休職日数は83日で,所定勤務日数は66日,平成17年7月支給の臨時手当の勤務反映期間中の休職日数は73日で,所定勤務日数は72日,同年12月支給の臨時手当の勤務反映期間中の休職日数は49日で,所定勤務日数は89日であったこと,被告は,客乗組合との上記合意に従って,原告らに対し,臨時手当を支給したが,勤務反映期間中の本件MSHについてはすべて欠勤日数として取扱ったこと,勤務反映期間中の本件MSHに乗務が割当てられたと仮定した場合には,原告P1,同P2及び同P4に本来支払われるべき臨時手当額と実際の支給額との差額は同原告ら請求金額と同一であるが,原告P3についてのそれは,平成16年12月支給の臨時手当については19万0322円,平成17年7月支給の臨時手当については16万7403円,同年12月支給の臨時手当については17万7260円となることが認められる。
イしかしながら,勤務反映期間中の本件MSHのうち,争点(2)において「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」にはあたらないと判断された日数分(別紙(7)の認容額一覧表の「JALFIOとの差」欄記載の日数分)を欠勤日数として扱うことは相当でないこととなるから,原告らに支払われるべき臨時手当差額分は次のとおりとなる。
(ア) 原告P1について
平成16年7月支給の臨時手当の勤務反映期間(平成15年10月1日から平成16年3月31日)に本件MSHとされた81日のうち47日については欠勤日数として扱うことは相当でないから,原告P1に支払われるべき臨時手当差額分は15万4207円となる。
(イ) 原告P2について
平成16年7月支給の臨時手当の勤務反映期間(平成15年10月1日から平成16年3月31日)に本件MSHとされた107日のうち47日については欠勤日数として扱うことは相当でないから,原告P2に支払われるべき臨時手当差額分は17万9932円となる。
(ウ) 原告P3について
a 平成16年12月支給分
平成16年12月支給の臨時手当の勤務反映期間(同年4月1日から同年9月30日)に本件MSHとされた58日のうち27日については欠勤日数として扱うことは相当でないから,原告P3に支払われるべき臨時手当差額分は8万8598円となる。
b 平成17年7月支給分
平成17年7月支給の臨時手当の勤務反映期間(平成16年10月1日から平成17年3月31日)に本件MSHとされた58日のうち29日については欠勤日数として扱うことは相当でないから,原告P3に支払われるべき臨時手当差額分は8万3701円となる。
c 平成17年12月支給分
平成17年12月支給の臨時手当の勤務反映期間(同年4月1日から同年9月30日)に本件MSHとされた64日のうち18日については欠勤日数として扱うことは相当でないから,原告P3に支払われるべき臨時手当差額分は4万9854円となる。
(エ) 原告P4について
a 平成16年12月支給分
平成16年12月支給の臨時手当の勤務反映期間(同年4月1日から同年9月30日)に本件MSHとされた100日のうち47日については欠勤日数として扱うことは相当でないから,原告P4に支払われるべき臨時手当差額分は17万1109円となる。
b 平成17年7月支給分
平成17年7月支給の臨時手当の勤務反映期間(平成16年10月1日から平成17年3月31日)に本件MSHとされた106日のうち51日については欠勤日数として扱うことは相当でないから,原告P4に支払われるべき臨時手当差額分は16万1151円となる。
c 平成17年12月支給分
平成17年12月支給の臨時手当の勤務反映期間(同年4月1日から同年9月30日)に本件MSHとされた99日のうち43日については欠勤日数として扱うことは相当でないから,原告P4に支払われるべき臨時手当差額分は13万4153円となる。

7 予備的請求について
次に,前記2において「客室乗務員が深夜業の免除を請求し,不就業が発生した場合」にあたると判断された日について,被告が休業手当の支払義務を負うかどうかが問題となるが,前記2及び5で検討したような事情を斟酌すれば,原告らの不就業が被告に起因する経営,管理上の障害によるものということはできない。
したがって,原告らの予備的請求は理由がない。
東京地方裁判所民事第11部
裁判官土田昭彦

 

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