高度プロフェッショナル制度 残業代ゼロ制度!?
2016-11-14
第三次安倍内閣は、「最大のチャレンジは『働き方改革』である。」として、今国会で労働基準法改正法案:「高度プロフェッショナル制度の創設」と「企画業務型裁量労働制の対象者の拡大」の成立を目指している。
しかしその内実はといえば、「残業代ゼロ」制度であり、「過労死促進」法案と思われる。
「働いた時間ではなく、成果で賃金を払う」
使用者からみれば、費用対効果の観点からもっともらしく思われるが、リスク負担の観点からみれば一方的に労働者にリスクを負わせる考え方とも考えられる。もっとも、ゲーム理論的には賃金が相当高めに設定されていれば経済的合理性がないわけではない。
そうした観点を考慮したのであろうか、安倍首相が長時間労働是正のためとして提案したのが「高度プロフェッショナル制度」だ。これは管理職の手前の年収1075万円を超える高度な専門知識が必要な労働者について、労働時間規定を「適用除外」するというもの。
しかし、そこには大きな落とし穴が存在する。
「高度専門職」の範囲や年収要件は、関係省令で決定することができる法制を予定しているため、法案が一旦成立してしまえば、その要件を国会の議決を経ることなく容易に下げることができる。また、実際に適用範囲の拡大に現実的可能性があることは、「残業ゼロ」法案導入に積極的かつ重要な役割を果たした経団連の榊原定征会長が「制度が適用される範囲をできるだけ広げてほしい。年収要件を緩和して、対象職種も広げていけない」と語り、経団連としてもすでに10年以上から「年収400万円以上」という適用範囲を要求していることから明らかであるといえる。
私は、労働者の賃金を下げることで国際競争力を創出する考え方は、宗主国が植民地の人民から富を不当に搾取する(一種のパワーハラスメント)に似て、旧態依然とした不道徳な方法であると考える。
労働者はモノではない。労働者と使用者とが対等であるとして彼らの協働(ウィン-ウィン)を重視する考え方が必要である。