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最高裁昭和38年6月21日第二小法廷判決・ 民集第17巻5号754頁

2016-12-10

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主    文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理    由

上告代理人小山内績の上告理由について。

論旨は、要するに、原判決が被上告人の十和田市議会議員就任が上告人会社の業務逐行を著しく阻害する虞れがあるかどうかについて、何等審理判断を加わえることなく、被上告人の懲戒解雇を無効と判断したことは、労働基準法七条の解釈適用を誤まり、審理不尽の違法に陥つたものであるという。
原判決(およびその引用する第一審判決)の確定した事実によれば、被上告人は昭和二九年四月一〇日上告人会社に雇い入れられたものであるが、昭和三四年四月三〇日施行の十和田市議会議員選挙に当選し、上告人会社の承認を得ないで、同市議会議員に就任したところ、上告人会社は、右は従業員が会社の承認を得ないで公職に就任したときは懲戒解雇する旨の就業規則(一六条二号、八五条一三号、八四条六号)に該当するとして、同年五月一日付で被上告人を懲戒解雇に附した、というのである。
おもうに、懲戒解雇なるものは、普通解雇と異なり、譴責、減給、降職、出勤停止等とともに、企業秩序の違反に対し、使用者によつて課せられる一種の制裁罰であると解するのが相当である。ところで、本件就業規則の前記条項は、従業員が単に公職に就任したために懲戒解雇するというのではなくして、使用者の承認を得ないで公職に就任したために懲戒解雇するという規定ではあるが、それは、公職の就任を、会社に対する届出事項とするにとどまらず、使用者の承認にかからしめ、しかもそれに違反した者に対しては制裁罰としての懲戒解雇を課するものである。しかし、労働基準法七条が、特に、労働者に対し労働時間中における公民としての権利の行使および公の職務の執行を保障していることにかんがみるときは、公職の就任を使用者の承認にかからしめ、その承認を得ずして公職に就任した者を懲戒解雇に附する旨の前記条項は、右労働基準法の規定の趣旨に反し、無効のものと解すべきである。従つて、所論のごとく公職に就任することが会社業務の逐行を著しく阻害する虞れのある場合においても、普通解雇に附するは格別、同条項を適用して従業員を懲戒解雇に附することは、許されないものといわなければならない
されば、本件就業規則の右条項に基づく被上告人の懲戒解雇を無効とした原判決の結論は正当であつて、所論の違法はなく、論旨は、その理由なきに帰し、排斥を免かれない。
よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
裁判官池田克は退官につき評議に関与しない。

最高裁判所第二小法廷
裁判官    奥   野   健   一
裁判官    山   田   作 之 助
裁判官    草   鹿   浅 之 介
裁判長裁判官河村大助は退官につき署名押印することができない。
裁判官    奥   野   健   一

 

 

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