残業代請求|福岡の司法書士 にじいろ法務事務所

新着情報

最高裁昭和49年7月22日第一小法廷 判決・民集第28巻5号927頁

2016-12-14

未払賃金請求、未払残業代請求、不当解雇、不当懲戒など個別労働紛争に適切に対応するには、労働法の知識が必要です。労働問題に関する重要な法律知識を身につけましょう。

残業代請求のご相談は、福岡・司法書士にじいろ法務事務所

 

主    文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理    由

上告代理人鎌田英次、同渡辺修、同竹内桃太郎の上告理由について。

論旨は、要するに、原判決の確定した事実関係のもとにおける本件各労働契約の法的性質は、反覆更新後も依然として二か月の確定期間の定めのある契約であり、ただ、被傭者において期間満了後の継続雇傭を期待することに合理性が認められる場合に該当するものとして、使用者のなす更新拒絶が信義則ないし権利濫用の法理によつて制約を受けるにとどまるものと解すべきであるのに、原判決が、これをあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存続していたものと判断し、更新拒絶を解雇と同視すべきものとして臨時従業員就業規則所定の解雇条項をそのまま適用した結果、被上告人らに対する本件各傭止めの効力を否定すべきものとしたのは、法令の解釈適用を誤り、事実認定に関する経験則違反、採証法則違反、審理不尽、判断遺脱、理由不備等の違法をおかすものである、というのである。

ところで、本件各労働契約締結及びその当時の上告会社における臨時工雇傭の実状について、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)が認定する事実関係は、次のとおりである。
上告会社は、電気機器等の製造販売を目的とする株式会社であるが、その従業員には正規従業員(本工)(昭和三七年三月現在四九、七五〇名)と臨時従業員(臨時工)の種別があり、後者は、基幹作業に従事する基幹臨時工(同じく一九、四六〇名)と附随作業を行うその他の臨時工(同じく一、四七〇名)とに分かれている。
基幹臨時工は、景気の変動による需給にあわせて雇傭量の調整をはかる必要から雇傭されたものであつて、その採用基準、給与体系、労働時間、適用される就業規則等において本工と異なる取扱をされ、本工労働組合に加入しえず、労働協約の適用もないけれども、その従事する仕事の種類、内容の点においては本工と差異はない。
上告会社における基幹臨時工の数は、昭和二五年朝鮮動乱を機として漸次増加し、以後昭和三七年三月までは必ずしも景気の変動とは関係なく増加の一途をたどり、ことに昭和三三年から同三八年までは毎年相当多数が採用され、総工員数の平均三〇パーセントを占めていた。そして、基幹臨時工が二か月の期間満了によつて傭止めされた事例は見当らず、自ら希望して退職するものの外、そのほとんどが長期間にわたつて継続雇傭されている。また、上告会社の臨時従業員就業規則(以下、臨就規という。)の年次有給休暇の規定は一年以上の雇傭を予定しており、一年以上継続して雇傭された臨時工は、試験を経て本工に登用することとなつているが、右試験で数回不合格となつた者でも、相当数の者が引続き雇傭されている。被上告人らは、いずれも、上告会社と契約期間を二か月と記載してある臨時従業員としての労働契約書を取りかわして入社した基幹臨時工であるが、その採用に際しては、上告会社側に、被上告人らに長期継続雇傭、本工への登用を期待させるような言動があり、被上告人らも、右期間の定めにかかわらず継続雇傭されるものと信じて前記契約書を取りかわしたのであり、また、本工に登用されることを強く希望していたものであつて、その後、上告会社と被上告人らとの間の契約は、五回ないし二三回にわたつて更新を重ねたが、上告会社は、必ずしも契約期間満了の都度、直ちに新契約締結の手続をとつていたわけでもない
以上の認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、すべて正当として首肯しうるところである。

原判決は、以上の事実関係からすれば、本件各労働契約においては、上告会社としても景気変動等の原因による労働力の過剰状態を生じないかぎり契約が継続することを予定していたものであつて、実質において、当事者双方とも、期間は一応二か月と定められてはいるが、いずれかから格別の意思表示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思であつたものと解するのが相当であり、したがつて、本件各労働契約は、期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたものといわなければならず、本件各傭止めの意思表示は右のような契約を終了させる趣旨のもとにされたのであるから、実質において解雇の意思表示にあたる、とするのであり、また、そうである以上、本件各傭止めの効力の判断にあたつては、その実質にかんがみ、解雇に関する法理を類推すべきであるとするものであることが明らかであつて、上記の事実関係のもとにおけるその認定判断は、正当として首肯することができ、その過程に所論の違法はない。

そこで考えるに、就業規則に解雇事由が明示されている場合には、解雇は就業規則の適用として行われるものであり、したがつてその効力も右解雇事由の存否のいかんによつて決せらるべきであるが、右事由に形式的に該当する場合でも、それを理由とする解雇が著しく苛酷にわたる等相当でないときは解雇権を行使することができないものと解すべきである。ところで、本件臨就規八条は上告会社における基幹臨時工の解雇事由を列記しており、そのうち同条三号は契約期間の満了を解雇事由として掲げているが、上記のように本件各労働契約が期間の満了毎に当然更新を重ねて実質上期間の定めのない契約と異ならない状態にあつたこと、及び上記のような上告会社における基幹臨時工の採用、傭止めの実態、その作業内容、被上告人らの採用時及びその後における被上告人らに対する上告会社側の言動等にかんがみるときは、本件労働契約においては、単に期間が満了したという理由だけでは上告会社において傭止めを行わず、被上告人らもまたこれを期待、信頼し、このような相互関係のもとに労働契約関係が存続、維持されてきたものというべきである。そして、このような場合には、経済事情の変動により剰員を生じる等上告会社において従来の取扱いを変更して右条項を発動してもやむをえないと認められる特段の事情の存しないかぎり、期間満了を理由として傭止めをすることは、信義則上からも許されないものといわなければならない。しかるに、この点につき上告会社はなんら主張立証するところがないのである。もつとも、前記のように臨就規八条は、期間中における解雇事由を列記しているから、これらの事由に該当する場合には傭止めをすることも許されるというべきであるが、この点につき原判決は上告会社の主張する本件各傭止めの理由がこれらの事由に該当するものでないとしており、右判断はその適法に確定した事実関係に照らしていずれも相当というべきであつて、その過程にも所論の違法はない。そうすると、上告会社のした被上告人らに対する本件傭止めは臨就規八条に基づく解雇としての効力を有するものではなく、これと同趣旨に出た原判決に所論の違法はない。論旨はすべて採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官    藤   林   益   三
裁判官    大   隅   健 一 郎
裁判官    下   田   武   三
裁判官    岸       盛   一
裁判官    岸   上   康   夫

 

 

未払賃金請求、未払残業代請求、不当解雇、不当懲戒など個別労働紛争に適切に対応するには、労働法の知識が必要です。労働問題に関する重要な法律知識を身につけましょう。

 

残業代請求のご相談は、福岡・司法書士にじいろ法務事務所

残業代請求のことなら、福岡の司法書士 にじいろ法務事務所 電話受付時間 平日 9:00~18:00